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借地人から借地権(および建物)を買い取り、期限付きで借地人を退去させることができた事例

第1 依頼内容と結果

先祖代々から貸地を所有している田中様が賃貸中の貸地について、借地人と退去についての交渉をしたいとの相談を受けました。田中様が主張するには、借地人の岡本さんが50代の方で仕事をやっているようですが、職業内容までは分からないとのことでした。たまに、借地人の建物に職人のような方々が出入りしている様子が見受けられるとのことでした。自分も自分の親(80歳過ぎの高齢者)は、特に夜に治安が悪くなりそうで、心配で眠られない状態でした。この状態を解消し、上手く借地人を退去させることができないかというご相談でした。

 

当初からこの示談交渉事件を受任して、まず第一に借地からの立ち退き、万が一これが難しい場合は地代の値上げを求めていくことにしました。なお、地代の値上げはそれ自体が借地人にとって、負担増しになります。そのため、退去を求めることについては、結果としては援護射撃になるので、二番目の策として検討したいと薦めた経緯がありました。

 

第2 ご相談内容(事案背景),解決方法,費用・時間と得られた利益

1 ご相談内容

田中様はご相談の際に過去の借地人の土地の利用状況等、借地契約の経緯いきさつおよび借地の利用状況等を詳しく教えてくれました。第1回目の相談の際から、借地契約書、更新契約書、借地の図面、建物の登記簿謄本、建物図面等を持参いただけました。田中さんの説明によれば、この借地契約は戦後すぐに始まったもので、70年近く経過したものであること、借地および建物の利用状況について、岡本さんには近隣には迷惑や不安を表示させるような不適切な使い方があったこと、例えば、建物内および建物の敷地内に使用済みの壊れた家電、不燃物と思われるゴミ、自分がやっていると思われる左官業による廃材や残材等および古くなった道具等を放置しており、一部は雨や風などで腐っている状態であった点が明らかになりました。このため、当職はこの立ち退き交渉にあたり、まずは借地の用法違反(少なくとも近隣へ迷惑をかけずに使う義務に違反)に基づき、借地契約の解除および建物の収去、土地明け渡しを求めました。

 

この用法違反は、地主である田中様と借地人である岡本さんとの間の信頼関係を破壊するにまで至っているかどうか微妙な事案でした。そのため、当職は田中様と協議しました。協議の内容は、あくまでも用法違反を主張して、借地契約の解除、土地の明け渡しを求めるメリット、すなわち、訴訟に勝てば、こちらの主張が100%通る=借地人の費用負担で、建物を壊させて、新地にさせた上で土地が戻ってくるということがあります。 デメリットとしては、1訴訟に勝つか負けるかは用法違反が信頼関係が破壊に至っているかどうかによるため、1見通しが不安定である、訴訟なので、結果が出るまで時間がかかる 1時間がかかることから、費用が最もかかる ということが言えます。

 

このメリット・デメリットを依頼者の田中様に考慮してもらった結果、「負うリスクが高すぎるのではないか」とのご意見を頂きました。そのため、当職は次善の策として、次の提案をしました。用法違反による借地契約の解除をちらつかせながら、ただ話し合いの解決が進むのであれば、建物および借地権をそこそこの額で買い取るとのことを相手方に伝えました。この提案のメリットとして、上手くいけば、おそらく最も早期に借地から退去させることができます。一方、デメリットとして、建物および借地権の買取分だけ出費(=借地人の承諾が無ければ、合意にも至らないケースがある)があります。また、二つ目のデメリットとして、建物および借地権を買い取る以上、その買取費用は依頼者である田中様の負担になるということがあります。さらに、三つ目のデメリットとして、用法違反が本当に解除原因にまでなる場合には、解決法としては本筋から外れるということもあります。

 

結果的に、田中様は「少々の費用は払っても良いので、できるだけ早くこの計画で話を進めてほしい」と依頼してきました。

 

2 解決方法

まず、用法違反により借地契約の解除を求めました。具体的には、近隣の住民に迷惑を及ぼしているという点を写真等も含め強調して主張しました。(これにより、借地人の岡本さんは用法違反による借地契約の解除を恐れたはずです。)ただし、この最初の通知の中にも、話し合いで解決できる場合は、地主の田中様側も説得していく用意はあります。

 

その通知を見て、事務所まで連絡してきた岡本さんに当職事務所までお越しいただきました。その中で、今回の用法違反と思われることについて、地主の田中様が怒っていらっしゃり、あくまでも裁判をした上で土地を取り戻してほしいとのことを強固に訴えている点を伝えました。ただし、借地人である岡本さんの立場を当職は理解できなくもないため、田中様に対して、ただで追い返すことはかわいそうなのではないかと説得してみる旨も岡本さんに伝えました。その後、何度か電話あるいは書面でやり取りをしました。そのうち、借地人側にも代理人の弁護士がつきました。そのため、交渉はスムーズに進みました。岡元さん側の弁護士は、当初は理屈通り借地権価格(最大で新地価格の60%程度)の支払いを求めてきていました。

 

ところが、これに対して、当職側が写真を示し、用法違反の点、すなわち、これによって契約解除もあり得る点を説明した時点から岡本さん側の代理人の態度が明らかに変わってきました。おそらく訴訟で判決に至った場合の結果を一専門家として考えてみた結果の態度だったと思います。そこで、当職側は次の提案をしました。

 

1本件は建物および借地権の価格分は払えない。新地の60%に相当する金額など到底払えない。

 

それでも、幾ばくかの立ち退き料を払うつもりはある。新地価格基準で考えれば、最大でも15~20%に該当する金額である。これは地主様による金額です。そ子から、更に下記の金額を引かせました。

 

(1) 古家のため、解体費用としての150~200万円

(2) 放置されたゴミの山として、搬出撤去処分の費用としての50~100万

 

としたところ、借地人の代理人は妥協案として、次のような提案をしてきました。本件では、借地契約の解除が公明正大に認められたわけではないため、借地権が存在することを前提とはしますが、解除の肯否は非常に不安定の話であるため、新地価格の30~40%までは譲歩を考えたいとのことでした。新地価格の30~40%の金額から、(1)建物の解体費用としての150~200万円、(2)搬出撤去処分の費用としての50~100万の各控除は認めることにしました。

 

当職もそろそろ落としどころと考え、田中様に説得をしました。最終的には、田中様がこの借地の処理のために、当初考えていた予算の金額でほぼ終わらすことができました。具体的には、新地価格の30~40%から(1)建物の解体費用としての150~200万円、(2)搬出撤去処分の費用としての50~100万の2つを控除した金額になりました。以上のように、信頼関係が破壊されるような事象があれば、弁護士に依頼することで、借地人等に対して強気で交渉していくことも不可能ではありません。

 

3 依頼者の支払った弁護士費用と時間,およびそれにより得られた利益

結果的に、田中様は借地契約の解除が認められた場合よりは出費はかさんだかもしれません。具体的には、新地価格の30~40%から(1)建物の解体費用としての150~200万円、(2)搬出撤去処分の費用としての50~100万を控除した金額した分の支出は余儀なくされました。ただし、返還された借地を新地として、自ら利用するなり、他者に売却することができるようになったため、田中様が得られる利益は新地価格そのものであると言えます。

 

単純に計算しても、新地価格から「新地価格の30~40%から(1)建物の解体費用としての150~200万円、(2)搬出撤去処分の費用としての50~100万を控除した金額した分」を差し引いた分が得られるため、新地価格の70%以上を得られたことになります。これが、弁護士に依頼した際に得られる大きなメリットです。