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マンションの権利関係と管理

第1 マンション権利関係(区分所有法)

1 区分所有法の特徴

民法で規定された一物一権主義(一つの物の上には一つの所有権しか成立しない)の例外として、一棟の建物の一部であっても、独立の物として物権の客体になる、とされていることが一番の特徴。
 
建物の部分を目的とする所有権を「区分所有権」といい、その所有者を区分所有者という。
対象となる一棟の建物は、「専有部分」と「共用部分」に分けられる。前者が区分所有権の対象となり、区分所有者は排他的な権利を持っている。後者は区分所有者全員が共同で使用管理する階段、廊下等であり、区分所有者はこの部分に対して共有持分権を有する。

なお、共用部分のうち、構造上・機能上特に一部区分所有者のみの共用に供されるべきことが明白な場合は、「一部共用部分」とされる。
 
民法と区分所有法の主な違い
民法では各共有者はいつでも共有物の分割請求を行うことが出来る
→ 区分所有法では、共用部分の分割請求は認められない
民法では共有持分の放棄が認められる
→ 区分所有法では放棄は認められない
民法では、共有者は共有物の持ち分に応じた使用ができる
→ 区分所有法では、各共有者は共有部分を「その用法に従って」使用できる
区分所有法では、専有部分と分離して共用部分の共有持分を処分することはできない
民法では、共有物の変更には共有者全員の同意、管理には持ち分価格の過半数が必要
→ 区分所有法では、管理・変更は区分所有者の集会決議事項
区分所有法では、規約で定めのない限り、共有部分の負担、利益収取は各区分所有者の持ち分に応じる
 
建物の共用部分についての管理変更は、集会決議の決定事項であるから、原則は区分所有者の多数決によって決められる。専用部分を管理するのは各区分所有者であるが、区分所有権はもとより共同生活を前提とした権利のため、各区分所有者の「共同の利益」を図るという必要性から、所有権の排他的・絶対的権利性に一定の制約が課されている。
 
区分所有者は建物の保存に有害な行為その他建物の管理又は使用に関し、区分所有者の共同の利益に反する行為をしてはならない。共同の利益に反する行為があった場合には、行為の停止請求・専有部分の使用禁止請求・区分所有権の競売請求を行うことができる。

また、一定の場合には、他の区分所有者に自己の専有部分を使用させなければならない。
(ガス管のように、他の区分所有者のためでもあるものが専有部分に設置されている場合が多い。特に倉庫や車庫など)
 

2 専有部分と共用部分の区別

建物の各部分が共用部分にあたるのか、専有部分にあたるかということは、権利の帰属・収取・修繕における費用は誰が負担するのか・管理費の分担を考える上で重要な問題である(共用部分である場合には、区分所有者が皆で修繕費を負担する)。前述した一部共用部分の場合には、一部区分所有者のみが負担を負う。
 
専有部分…建物の一部分を指すが、「建物の附属物」(建物に附属し、構造上・効用上建物と一体となり、不可分の関係にあるもの。電気配線、ガス配管、上下水道管等)や「附属の建物」を含む場合もある。駐車場や倉庫も専用部分となる。
a…一棟の建物であること
b…構造上の独立性
 
区分所有権の目的である建物の部分が所有権の内容たる物的支配に適するものでなければならないことから、一般的にはその建物部分を他の部分から隔離する何らかの設備が存在することが必要(壁、扉、窓等)。ただし、常に仕切られている必要はないため、シャッターやガラス扉等の開閉する設備でも構わない(東京地裁昭和51年10月1日)。

 

  *問題となる建物部分の周囲全てが完全に障壁・階層(及び天井)で遮蔽されている必要があるか?
→独立した物的支配に適する程度には他の部分と遮断され、その範囲が明確であることを持って足り、必ずしも周囲全てが完全に遮蔽されていることを要しない」
建物部分と外部とを遮断する標識の有無、当該部分の利用状況ないし利用形態等を総合的に考慮し、当該部分が社会通念上所有権の内容たる物的支配に適するものと認められる程度に「その範囲が明確に区別されているか否か」という実質的な判断をしている。
 
最高裁判例昭和56年6月18日
建物の区分所有等に関する法律1条にいう構造上区分された建物部分とは、建物の構成部分である隔壁、階層等により独立した物的支配に適する程度に他の部分と遮断されており、その範囲が明確な建物部分をいい、必ずしも周囲すべてが完全に遮蔽されていることを要しない。
 
c…利用上の独立性
建物の部分が、独立して建物の用途として供することができること、「その部分が独立の出入り口を有し、直接、あるいは、共用部分を利用することによって外部に通じている(外部との通行の直接性)」ことが必要とされる。(トイレ等は他の部屋を通らなければならないため、この要件を満たさない)
 
東京地裁昭和27年1月30日
本件においては、居宅の出入口に店舖が設けられ、居宅から公道に出るには店舗を通らなければ他に通路がないのであるから店舗と居宅とを分離するときは居宅と公道との通路が閉鎖せられるため、原告の主張する店舗の部分はそれ自体店舗として独立の所有権の客体となり得ることは否定できないとしても、その奥にある居宅の所有者の意思に反して、居宅自休としては出入口のない不動産としての経済的効用を喪失させられる結果となるのである。このような場合には店舗と建物とは、各独立の不動産としての経済的効用を有するものと認めることはできない。従って本件店舗は居宅の一部たる附属物であって独立の不動産として所有権の客体となり得ないものというべきであるから、これについて広田のなした所有権の保存登記はもとより無効のものと断ずべきである。
 
最高裁判決昭和44年7月25日
本件第三建物は、第二建物の一部の貸借人Aが昭和三三年以前に自己の費用で第二建物の屋上に構築したもので、その構造は、四畳半の部屋と押し入れ各一課からなり、外部への出入りは、第二建物内の六畳間の中にある梯子段を使用するほか方法がないものであることは、原審が適法に確定した事実である。そうとすれば、第三建物は、既存の第二建物の上に増築された二階部分であり、その構造の一部を成すもので、それ自体では取引上の独立性を有せず、建物の区分所有権の対象たる部分にはあたらないといわなければならず、たとえAが第三建物を構築するについて右第二建物の一部の賃貸人Bの承諾を受けたとしても、民法二四二条但書の適用はないものと解するのが相当であり、その所有権は構築当初から第二建物の所有者Bに属したものといわなければならない。
 
*建物部分の内部に、内部に他の建物部分ないし建物全体の利用・保安・管理に必要不可欠な共用設備が多少なりとも存在する場合がある。共用設備には、本来は区分所有者の排他的な支配は及ばないことから、建物内部に共用設備が存在する場合、区分所有の対象になるか?
→臭気抜きの排気管が壁の内部に2か所、排水用のマンホールが床に3か所設置されている車庫の場合、①共用設備が当該建物部分の小部分を占めるにとどまり(共用設備の占める割合の小規模性)、②その余の部分をもって独立の建物の場合と実質的に異なるところのない態様の排他的使用に供することができ(当該建物部分の排他的利用可能性)③他の区分所有者らによる共用部分利用・管理によって排他的使用に格別の制限ないし障害を生ずることなく、反面かかる使用によって共用設備の保存及び他の区分所有者らによる利用に影響を及ぼすこともない場合には、利用上の独立性が肯定される。
 
最高裁昭和56年6月18日
構造上他の部分と区分され、かつ、それ自体として独立の建物としての用途に供することができるような外形を有する建物部分は、そのうちの一部の区分所有者らの共用に供される設備が設置されていても、右の共用設備が当該建物部分の小部分を占めるにとどまり、その余の部分をもつて独立の建物の場合と実質的に異なるところのない態様の排他的使用に供することができ、かつ、他の区分所有者らによる右共用設備の利用、管理によって右の排他的使用に格別の制限ないし障害を生ずることがなく、反面、かかる使用によって共用設備の保存及び他の区分所有者らによる利用に影響を及ぼすこともない場合には、なお建物の区分所有等に関する法律にいう専有部分にあたる。

建物の1階部分にある車庫内に、建物の共用設備として、壁の内側附近2か所に臭気抜きの排気管が取りつけられ、出入口附近の床の3か所に排水用のマンホールが設置されていても、これらが車庫のうちのきわめて僅かな部分を占めるにすぎず、かつ、これらがあるために建物の管理人が日常車庫に出入りする必要が生ずるわけでもないなど、原判示の事実関係のもとにおいては、右車庫は、建物の区分所有等に関する法律にいう専有部分にあたる。
→建物部分の利用目的、利用形態及び利用部分の位置、面積、形状、利用度、管理方法等を斟酌して判断されている。
 
共用部分…専用部分以外の建物部分(廊下や階段)、専用部分に属しない建物の附属物(エレベーター、冷暖房施設)、規約によって共用部分とした附属建物。
 
一部共用部分…共用部分のうち、構造上・機能上特に一部区分所有者のみの共用に供されるべきことが明らかな部分。例えば、1階が店舗、2階以上は住戸という建物の場合で、1階の店舗部分に、2階住戸部分とは構造上完全に独立して設置された1階店舗部分専用の出入り口等。一部共用部分は、これを共有すべき区分所有者の共有に属する。
 
*全体共用部分は、原則管理費用の支払い等の管理のための義務は、区分所有者全員が王が、一部共用部分については、その当該一部共用部分を共有すべき区分所有者らがその持ち分に応じて負う。つまり、共用部分か一部共用部分かは、各区分所有者の経済的利益に直結する問題となってくる。一番問題となるのは、当該共用部分が構造上完全に分離されておらず、各区分所有者の使用頻度に明確な差異がある場合に、その部分の管理費の支払い義務を区分所有者全員が負うのか否か、という点。
 
東京高判昭和59年11月29日
マンションの1階部分に店舗(独立の出入り口あり)と、構造上分離がされている玄関ホール、階段、非常階段、エレベーター室、管理人室等がある場合に、1階の区分所有者も含めた全区分所有者が負うのか、が問題となった。
→法律上は一部共用部分を「一部の区分所有者のみの用に供されるべきことが明らかな共用部分」と定めているが、その趣旨は、元来、各区分所有者ないしその専有部分と共用部分との関係は、位置関係、使用度、必要性等さまざまであるが、これら関係の濃淡、態様を細かに権利関係に反映させることは困難でもあり、相当でもなく、むしろ、建物全体の保全、全区分所有者の利益の増進、法律関係の複雑化の防止等のため、ある共用部分が構造上機能上特に一部区分所有者のみの共用に供されるべきことが明白な場合に限つてこれを一部共用部分とし、それ以外の場合は全体共用部として扱うことを相当とするからであると解される。
これを本件についてみると、前述したところによると、本件共用部分(但し、屋上、外壁、塔屋等全体共用部分であることに争いないものは、ここでは除く。)の中、玄関ホール、階段室、エレベーター室、エレベーター、非常階段、管理人室等は、控訴人の専有部分とは構造上かなり分離され、同人の使用度も少ないとはいえ、なお右専有部分と完全に分離されたものでもなく、控訴人の右専有部分の使用に必要不可欠の部分であって、これらを構造上機能上控訴人を除く被控訴人らのみの共用に供されるべきことの明白な共用部分と認めることはできず、本件共用部分中爾余の部分が一部共用部分であることを認めるべき証拠もないから、結局、本件共用部分は全体共用部分というべきである。
 
*問題となりがちな部分
・駐車場・倉庫・車庫(昭和56年6月18日判決)
・管理室・管理人室
居住部分がなく、室内が事務所仕様で受付窓又はカウンターがあり、その他建物全体の諸設備機器に関わる非常警報装置。配電盤等が室内に設置されていて専ら管理業務がされる場合は、共用部分である。
一方、その部屋が居住部分も有していて管理する者が日常生活をすることができる設備と空間を備えている場合や、管理業務をする部屋と居住部分が別になっている場合(両者の間の仕切りの有無は問わない)には、居住部分は専有部分とされる可能性がある。
(→管理規約で定めておくべき、判例では後者は専有部分とされていたが、以下の判例に注意)
 
最高裁平成5年2月12日
本件マンションは、比較的規模が大きく、居宅の専有部分が大部分を占めており、したがって、本件マンションにおいては、区分所有者の居住生活を円滑にし、その環境の維持保全を図るため、その業務に当たる管理人を常駐させ、多岐にわたる管理業務の遂行に当たらせる必要があるというべきであるところ、本件マンションの玄関に接する共用部分である管理事務室のみでは、管理人を常駐させてその業務を適切かつ円滑に遂行させることが困難であることは右認定事実から明らかであるから、本件管理人室は管理事務室と合わせて一体として利用することが予定されていたものというべきであり、両室は機能的にこれを分離することができないものといわなければならない。そうすると、本件管理人室には、構造上の独立性があるとしても、利用上の独立性はないというべきであり、本件管理人室は、区分所有権の目的とならないものと解するのが相当である。
 
・隔壁・床スラブ…
専有部分相互間の障壁は、どこまでが専有部分か共有部分が?→マンションの骨格にあたる中央の部分は共用部分であり、その上塗りの部分は専有部分とされている。マンションの構成部分は共用とすべきだが、内装部分は専有部分として、各区分所有者が原則自由に使用・変更できるべきであるから。境界壁や床の模様替え、修理・改修等を行う場合、自分の費用で自由に行うことができる。しかし、マンションの構成にコンクリート部分(素材部分)変更・影響を及ぼす工事については区分所有者の総会で共用部分変更の決議を得る必要がある。
 
・ピロティー
2階以上を支える柱ないし壁、2階床板と地表の床に囲まれた建物内の1階吹き抜け部分のこと。建物内の空間部分として完成された建物部分。学説上は建物内の広場、集会場やホール、緊急時の避難通路としての用途を有していることから、1棟の建物全体の居住性を高める部分として、共用部分と考えられている。現時点では判例は割れている。
 
専有部分とした裁判例
東京地裁昭和56年8月3日
被告が本件建物の専有部分の分譲を開始した際、各専有部分の所有利用にとつて不可欠な施設は、一階部分においては、管理事務所、階段、エレベーター室が設置されている玄関ホールと本件建物の電気設備の維持に必要な電気室とであって、本件車庫部分は、右玄関ホール及び電気室と明確に区分されていて、避難通路として使用される場合を除いては、本件建物の専有部分の所有、利用上不可欠な空間ではなかったこと、このことは、一階部分の右構造上からみて、また、被告が当時本件車庫部分を資材置場として使用していたことや分譲の際被告が配布したパンフレットに本件車庫部分が店舗として利用されている本件建物の完成予想図が印刷されていたことからして、原告を含む専有部分の買主に認識されていたと認められること、被告は、右分譲開始当時から、本件車庫部分が被告に専属する建物部分であると考えており、これを本件建物の区分所有者が無償で利用できる共用部分とする意図はまつたくなく、従って、各専有部分の分譲価格の決定に当たっても、本件車庫部分の利用の対価を分譲価格に反映させたものとは認められず、一方、原告を含む本件建物の専有部分の買主も、買受当時、本件車庫部分の利用ができることを前提に各専有部分を買受けたものではなかつたことが認められる。
 
神戸地裁平成9年3月26日
以上の認定事実によれば、本件マンションの建築分譲当初、区分所有者にとって、その専有部分の所有、利用に必要である本件マンションの構造部分としては、玄関とそれに続く郵便受けの設置されたロビー部分、階段、廊下、電気室、機械室等であり、本件係争部分は、専有部分の所有、利用にとって不可欠な部分ではなかったというべきである。

 本件係争部分は、その構造上、脚柱のみの開放部分が多いが、北部の西側ロビー部分に接する部分にはコンクリート製の隔壁が設けられ、西部の北側半分もコンクリート製の壁面が設置されており、ロビー部分はタイル貼ってあるのに対し、本件係争部分は、舗装されていなかったのであって、ロビー部分と本件係争部分との境界は明確であり、住民が二階以上の専有部分への出入りのために自由に立ち入ることができる構造ではなく、一応独立の物的支配が可能な程度に他から遮断されているものといえる。

 被告は、当初から本件係争部分を資材置場として利用する意図で、自己の専有部分として留保し、実際にも資材置場として利用してきたのであり、本件係争部分を共用部分とする意図は全くなく、分譲の際にもそのような説明をしておらず、分譲価格の決定に当たっても本件係争部分の利用の対価を反映させなかったものと考えられる。本件マンションの各戸の分譲を受けた区分所有者も、本件係争部分の利用が可能であることを前提として専有部分の分譲をうけたものとは考えられず、また、各区分所有者としても、前記の原告組合の管理規定の記載や敷地の持分権の登記の記載、敷地にかかる固定資産税等の支払状況に照らせば、本件係争部分が被告の専有部分として留保されていることを認識することができたものといえる。

 以上の認定判断によれば、本件係争部分は、被告の専有部分に属し、本件マンションの法定共用部分ではないというべきである。
 
共用部分とした裁判例
東京地裁平成3年2月26日
本件マンションの居住者のために本件ピロティー全体が通路として必要不可欠なものであるとはいい切れず、実際にも被告は本件マンションを建設するに当たり、通路部分を示すものとして、前記のような色違いのタイルを張っていたことが認められる。しかしながら、区分所有権の対象となるためには、その部分について建物の構造部分による一定以上の遮断性が要求されるべきところ、本件ピロティーは、前記のような吹き抜け構造となっているうえに、前記色違いの夕イル部分と他の部分との間には、これを区分する何らの物理的な構造物は存在せず、また実際の利用状況を考えても、本件ピロティーの広さ、二つの入口と玄関ホール・階段との位置関係からみて、本件ピロティーのほぼ全域が、本件マンションの居住者の通行の用に供されているものとみることができる。したがって、被告が駐車場として使用してきた本件ピロティー部分が、独立した物的支配に適する程度に他の部分と遮断されているとは到底認め難いところである。

 以上によれば、右駐車場部分は、結局のところ、構造上の独立性、利用の独立性が充足されていないから、被告の専有部分とはなり得ないというべきてある。したがって、本件ピロティーは、原告らを含む本件マンションの区分所有者全員の共有に属するものと認めるべきである。
 
・ベランダ・バルコニー
躯体部分(床面・屋根・手すり)は構造的に建物全体の躯体の一部であり、共用部分とされている。躯体部分に囲まれている空間部分については両隣や上下階と完全に遮断され、往来が全くできないようになっている場合には、利用上の独立性が認められるため、専有部分とされている。
 

3 共有部分についての決定

(1)変更・管理・保存行為
  区分所有法上、共有部分の管理は、①変更②管理③保存行為に分けられている。
①変更
 共用部分の形状または効用の著しい変更を伴うものであり、共用部分の形状または効用を確定的に変えること。著しい変更を伴わない場合には、②に含まれる。なお、この部分については平成14年の中高層共同住宅標準管理規約が改正されたことによって、判断基準が緩和されている。
②管理
 ①でも②でもないもの。
③保存行為
 共用部分を維持する(滅失、毀損を防止して現状の維持を図る)行為。区分所有法上、集会決議を要せず、各区分所有者が単独でなしうることとなっていることから、緊急を要する行為、比較的軽度のものを指すと考えられている。
(管理組合の理事長が行った違法な支出に対して区分所有者の1人がなした損害賠償請求は保存行為ではないとされ、地上げ屋の管理費不払いに対して区分所有者の1人が滞納管理費の請求をしたことも保存行為でないとされた。
 
①~③のどれにあたるかによって、集会の決議要件が異なってくる。
①の場合、区分所有者及び議決権の各3/4以上の多数による集会の決議が必要。(区分所有者と議決権の二重の特別多数となっている。)区分所有者の頭数は専有部分の個数によって数える、同一人が数個の専有部分を有している場合には、1として数える。区分所有者の数の要件は規約によって過半数までは減らすことができる。議決権については要件を変えることはできない。
②の場合、規約で特に定めていない場合には、普通決議(区分所有者及び議決権の各過半数)で決めることができる。
③の場合、各区分所有者が単独で決めることができる。
 
*①と②の区別は?決議要件等が異なり、この差は大きい。
 変更を加える箇所及び範囲、変更の態様及び程度、変更の目的等を勘案して判断される。
例:共用部分である階段室をエレベーター室に変える→①(形状の著しい変更)
  階段室にてすりを設ける           →②
集会室を廃止して賃貸店舗に転用する→①(効用の著しい変更)
  集会室を集会以外の目的でも使用を認める→②
 バリアフリー化等、福祉的な観点からの変更であれば、特段の事情がない限り軽微な変更と解するべきではないか、との考えもある。
 
*大規模修繕
平成14年の標準管理規約の改正以前は、大規模修繕を行うには集会の特別決議が要求されていたが、改正により、普通決議で行えるよう変更となった。しかし、平成14年以前に建築され、管理規約を改正していない建物においては、規約上では特別決議が要求されたままになっているところも多い。この場合に、改正を受けて普通決議で大規模修繕を行うことができるか?
→立法担当者は、区分所有者の意思としては、改正後は普通決議で大規模修繕を実施することができるとするものである、と説明をしている。しかし、改正においては特にこの点について言及されていないこと、大規模修繕には多額の費用を要することから、普通決議のみで大規模修繕を行うことはリスクが伴うと考えられる。
実務上は、規約を「大規模修繕には普通決議を要する」と規約を改正した上で、普通決議を行うことが望ましい。
 
(2)処分行為
共有部分の変更に留まらない共用部分の処分行為については、多数決では決められず、共用部分の共有者全員の同意が必要とされている。共用部分の一部であった廊下を改造して専有部分にする、分譲するということは、共用関係を廃止にあたるため、全員が合意しなければならない。

この点で問題となっていたのが、マンションの屋上の一部の賃貸借契約を普通決議に基づいて行った事例。第一審は区分所有者の団体ではなく、個々の区分所有者が共有持ち分権者として判断すべき、として契約を無効としたが(札幌地裁平成20年5月30日)、高裁はこれを覆して、管理に該当するため普通決議に基づく契約を有効とした(札幌高裁平成21年2月27日)。
 
札幌地裁平成20年5月30日
共用部分の管理という目的からすると、本来、共用部分は、区分所有者の共同の利益のために設置されているものであり、第三者に賃貸することは、その本来の目的に従ったとは言い難いこと、民法602条の期間を超える賃借権の設定の権限を区分所有者の団体に委ねなければならない必要性は乏しいこと、これらの賃借権の設定が区分所有者に与える影響は小さくないこと等を考慮すると、区分所有者の団体が決する問題ではなく、個々の区分所有者が共有持分権者として判断すべき問題であり、そもそも、区分所有者の団体が決議できる事項にはあたらないと言うべきであり、このような行為は、本件管理規約や区分所有法に基づいて決するのではなく、民法の原則に基づいて、共有者が全員でこれを行う必要があるというべきである。
 
札幌高裁平成21年2月27日
区分所有法は、区分所有関係が成立している建物の共用部分を対象とする限りにおいては、民法の特別法に当たるから、共用部分の賃貸借につき、民法602条の適用は排除され、同条に定める期間内でなければならないものではない。

 区分所有法17条1項は、「共用部分の変更(その形状又は効用の著しい変更を伴わないものを除く。)」が特別決議事項であると定めている。ここにいう「共用部分の変更」は、その文言から明らかなように、「形状又は効用の著しい変更を伴」うものである。したがって、本件管理規約46条3項2号の「敷地及び共用部分の変更」も、区分所有法17条1項と同じく、「形状又は効用の著しい変更を伴」うものであると解され、さらに、本件管理規約においては、「形状又は効用の著しい変更を伴」うものであっても、「改良を目的とし、かつ、著しく多額の費用を要しないもの」については、特別決議事項から除外されていると解すべきである。

 以上によれば、共用部分を第三者に賃貸して使用させる場合に必要な決議は、第三者に使用させることにより「敷地及び共用部分の変更(改良を目的とし、かつ、著しく多額の費用を要しないものを除く。)」をもたらすときは特別決議、これをもたらさないときは普通決議であると解される。
 

4 区分所有関係の成立・消滅の原因と時期

(1)成立時期
一棟の建物の内部に構造上、利用上の独立性を有する建物の部分が存在するという客観的状況に加え、当事者が当該建物部分を区分所有権の目的とするという特別の意思が必要とされている。(東京地裁昭和51年5月13日、横浜地裁昭和55年12月17日によれば、それは各専有部分について区分所有である旨の登記がなされた場合。未登記の場合には、一棟の建物を数人で当初から各自の取得部分を定めて建設した場合。)
事例としては、先に区分所有である旨が確認され(公正証書)、事後的に建物が完成した場合。→公正証書作成時点で区分所有関係が成立したとされたものもある(福岡地裁小倉支店平成6年10月21日)。

同一所有者が一棟の建物全住戸を一人で所有しているに過ぎない段階であっても、各専有部分を分譲して販売する広告を行ったり、区分所有建物として建物の表示登記を申請したりした場合には、区分して所有する意思が客観的に明確になったといえて、区分所有権が成立する。
 
*マンションの権利関係成立時に生じる問題
マンションの共用部分に関しては、管理規約が非常に重要になってくる。本来、規約の作成・変更・廃止のためには3/4の特別多数決が必要であるが、権利関係成立時(=マンション売買時)に、区分所有者が全員集まり規約を作成するということは通常考えられない。

基本的には、マンションの分譲業者が規約を作成し、売買契約書とともに管理規約の原案を交付することが多い(原始規約)。この原案に対して区分所有者から承諾書といった合意書面を取り付け、集会があったのと同じ効果を発生させることで規約を作成している。

この原始規約には実際のところ区分所有者の意見は反映されていないが、これを受け入れない=売買不成立となるため、購入希望者は受け入れてしまうことが多い。この原始規約が特に問題のないものであれば問題はないが、分譲業者や子会社、等価交換方式で区分所有者となる元地主に特別に利益を与えるような規約になっていることもあるので注意が必要。(修繕積立費や管理費が非常に低額、議決権や敷地の共有持分が著しく大きい、屋上等に特別の利用券が設定されている、管理会社が分譲会社である等)。

後から管理規約を変更しようとした場合には、3/4の特別多数決でしか変更ができないため、非常にハードルが高く、仮に議決権にそもそも不公平があった場合には変更自体が不可能となっている可能性がある。
 
(2)消滅時期
建物の区分をなくすことで区分所有権は消滅する。また、各建物部分が同一所有者の権利に属することになった場合、合併登記を行うことができ、登記をすることで区分所有関係は消滅する。
 

5 マンションの登記について

(1)専有部分と敷地の登記
区分建物においては、専有部分と敷地利用権の一体性の原則が採用されている。専有部分と敷地利用権を切り離して処分をすることができないことになっている。このため、登記においても区分建物と敷地利用権の一体性を公示する必要があり、区分建物の登記記録の表題部には敷地権の表示がなされ、敷地の登記記録の表題部には敷地権である旨の登記がされるようになっている。このため、権利関係の把握は容易になっている。ただし、区分所有法の改正された昭和58年以前に登記がされている建物については、従前の登記がそのまま残っている可能性があるため、注意が必要である。
 
*分離禁止の原則に反して専有部分のみ、もしくは敷地利用権のみ処分した場合はどうなるか?
 →原則として無効である。
ただし、区分建物と敷地利用権の一体性を公示する登記がなされる前に処分が行われた場合、処分の無効を善意の相手方に主張することはできない。この場合の善意とは、分離処分禁止に反する処分であったことを知らなかったことをいう。これには、専有部分とその敷地利用権が一体性の制度に服することを知らなかった場合(区分所有建物であることを知らなかった場合、区分所有建物の敷地であることを知らなかった場合)と分離処分できることができる旨の規約の廃止を知らなかった場合があたる。法律によって分離処分が禁止されていることを知らなかった場合には、ここでいう善意者には含まれない。
  ちなみに、善意者から更に権利を得た転得者は、善意であろうと悪意であろうと権利を取得する。
 
(2)共用部分の登記
共用部分については、民法177条が適用されず、権利に関する登記がなくても第三者に物権変動を対抗することができる。共用部分は、区分所有者や管理者以外の者が所有することはできないため、共用部分だけが単独で取引の対象となることはないことに加え、共用部分については規約を見れば権利関係が明らかであることから、177条を適用する必要がないためである。

なお、規約で共用とした部分については表題部に登記をすることができるが、法定共用部分については、外観上・構造上・利用上の独立性を有せず共用部分であることは明らかであるから、登記はできない。取引の安全を害する恐れがなく、第三者に共用部分であることを主張する必要がないためである。規約共用部分が登記の対象となるのは、規約共用部分は区分所有の対象となりうる性質を有しており、取引の安全を図る必要があるためである。
 
 
 

第2 マンションの管理

1 管理体制

(1)管理の対象
区分所有法で管理の対象とされるのは、建物、敷地、付属施設である。ただし、専有部分は各区分所有者自身が管理を行うため、対象となっているのは共有部分である。

例外的に、専有部分である設備のうち、共用部分と構造上一体となった部分の管理を共用部分の管理と一体として行う必要があるときは、管理組合がこれを行うことができる。
 
(2)管理の主体
区分所有法においては、
管理組合
管理者
管理組合法人
  が管理の主体として想定されている。
 
①管理組合
区分所有法3条では、区分所有関係の成立と同時に、当然に区分所有者の団体が構成されることになっている。これが管理組合である。

団体による集会の開催、規約の設定、管理者の指定は任意であり、何も決められていない団体も存在する。団体は、区分所有建物が消滅したときに消滅する。(ただし、清算手続を行うまでは事務手続きを行う必要があるため、清算手続を経て消滅する)

②管理者
区分所有者の団体が法人化されていない場合には、区分所有者全員で直接に共用部分の管理を行わなければならないこととなる。しかしこれは現実的ではないため、管理を円滑に行うために、一定範囲の管理行為については特定の者に権限を与えて管理を行わせることを法も「管理者を置くことが出来る」と認めており、実際に活用されている。これが管理者。

管理者は規約に特段の定めがない限り、集会の普通決議によって選任され、選任された者の承諾によって、管理者の地位に就任する。管理者は区分所有者でなくとも構わない(リゾートマンションでは、管理会社が管理者となっている例が見られる)。同様に解任も集会の普通決議によって行うことができる。なお、管理者に不正な行為、または適正に職務を行えない事情がある場合には、集会決議によらずに、各区分所有者が単独で管理者の解任を裁判所に請求することができる。設備の補修や管理費の収支報告を拒否した、決算報告がなされなかったという理由での解任請求が認められた例がある。

管理者は区分所有者の代理人となるため、管理者が組合の名前で行った行為は区分所有者全員に帰属する。共有部分に生じた損害保険金、賠償金、返還金等の受領、請求等 も行うことができる(受け取った金員は、各区分所有者全員に帰属する)。ただし、訴訟追行だけは、規約または集会の決議で認められている場合に限って、その職務に関し、区分所有者のために訴訟を追行することができる。なお、訴訟を追行する場合には、遅滞なく各区分所有者にその旨を連絡する必要がある。

③管理組合法人
①を法人化したもの。通常の法人と同様、組合自身が主体となることができるため、法律関係が明確になる、不動産登記や預金、契約等を管理人組合法人名義で行える、第三者との取引を安全に行えるというメリットがある。
その一方で、法人化には手間と費用が掛かる、理事の登記が必要であるというデメリットも存在する。

2 管理規約
(1)管理規約とは
上述のとおり、区分所有権は共同生活を前提とした権利であること、建物内には共用部分が存在することから、適切な維持管理のためには、区分所有者が従うルールが必要になる。そのため、区分所有法では管理規約を定めることができるとしている。管理規約を作成すると、その効力は区分所有者全員、包括承継人、特定承継人はもちろん、専有部分の占有者にも及ぶことになる。

(2)管理規約の設定・変更・廃止
管理規約の設定・変更・廃止のためには、集会において区分所有者及び議決権の3/4以上の多数決決議が要求されている。例外的に、規約の設定等が一部の区分所有者の権利に特別の影響を及ぼす場合には、その区分所有者の承諾を得なければならないことになっている。多数決のみで一部の区分所有者に著しい不利益を与えることのないようにするためである。
これまでに、特別の影響ありとして変更が認められなかったものとしては、専有部分を住居以外に使用することを禁じる規約、店舗部分の営業可能時間を2時間短くする規約、リゾートマンションの定住利用を禁止する規約、シェアハウスとしての利用を禁じる規約等がある。反対に、特別の影響がないとされたものとしては、犬の飼育を禁止する規約(規約制定前から飼育している区分所有者がいた)、管理費が専有面積に対して定額であったところを面積に対応するよう改定した規約、店舗部分では新たに飲食業を開始することを一律に禁止する規約等がある。

(3)標準管理規約
管理規約は非常に重要なものであるが、その作成をゼロから行うことは困難であり、何らかの不備が生じる可能性がある。そのため、国土交通省によって、ひな形として「マンション標準管理規約」(単棟型、団地型、複合用途型の3種)というものが公開されている。平成25年の調査によれば、8割以上のマンションがこのひな形と利用している。各マンションは、その特徴に応じてこのひな形を修正し、利用することとなる。
なお、平成20年には標準管理規約に関し、「マンション管理の新たな枠組みづくりに関する調査結果報告書」が発表されており、この中でマンション管理の現状と課題に触れられている。

3 管理費
(1)管理費とは
管理費とは、区分所有者が負担するマンション管理業務に対応して発生する費用のことを指す。なお、区分所有法上は明確な定義はされていないが、裁判例においては
①管理規約に基づいて区分所有者に対して発生
②具体的な額は総会決議によって確定し、月ごと所定の方法で支払われるもの
を管理費としている。支払い義務者は、区分所有者、特定承継者(例:区分所有権を譲り受けた者)、包括承継者(例:相続人)。
マンション分譲後に未分譲部分がある場合、当該未分譲部分の区分所有者(マンション販売業者)は共用部分の管理費の支払い義務を負うこととされている。
 
最判平成16年4月23日
本件の管理費等の債権は,前記のとおり,管理規約の規定に基づいて,区分所有者に対して発生するものであり,その具体的な額は総会の決議によって確定し,月ごとに所定の方法で支払われるものである。このような本件の管理費等の債権は,基本権たる定期金債権から派生する支分権として,民法169条所定の債権に当たるものというべきである。
 
 管理費が充当されるのは「通常の管理に要する経費」であり、
①管理員の人件費
②公租公課
③共用設備の保守維持費及び運転費
④備品費、通信費その他の事務費
⑤共用部分等に係る火災保険料その他の損害保険料
⑥経常的な補修費
⑦清掃費、消毒費及びゴミ処理費
⑧委託業務費
⑨専門知識を有する者の活用に要する費用
⑩地域コミュニティにも配慮した居住者間のコミュニティ形成に要する費用
⑪管理組合の運営に関する費用
⑫その他敷地及び共用部分等の通常の管理に要する費用
がそれにあたるとされている。
 
(2)管理費の未払いに対する手段
管理費は、マンションの維持管理に不可欠なものであり、一部の区分所有者がこれを支払わない場合、維持管理が困難となり、マンションの価値自体に影響が出かねない。そのため、管理組合としては、滞納者に対し何らの手段をとっていく必要がある。この手段は、どこまで許されるか。
・滞納者との話し合い
任意の支払いを求めていくが、既に滞納をしている区分所有者が相手であるため、実効性に欠ける。
・水道、電気等の供給を停止する
水道や電気の使用料金を管理組合が各区分所有者から集金している場合、滞納者に対して水道や電気の供給を停止するという方法があり得る。しかし、生活において水道、電気のような公共サービスは不可欠のものであるため、管理組合側の供給停止が権利の濫用にあたるとして、不法行為とされる恐れがある。裁判例では、不法行為の成立を認めたものと、認めなかったものとがある。
 
東京地裁平成2年1月30日
 原告堀夕美に対する給湯停止の措置は、管理規約に基づくもので、あらかじめ管理費等の支払を督促し、給湯停止措置に出ることを警告した上で行われたものではあるが、給湯という日常生活に不可欠のサービスを停めるのは、諸経費の滞納問題の解決について、 他の方法をとることが著しく困難であるか、実際上効果がないような場合に限って是認されるものと解すべきである。本件において、原告堀夕美の不払いの最大の原因となっていた冷暖房費については、現に旧シャトー松尾時代からの入居者七戸ほどに対しては、その意向に沿って冷暖房の供給をしていないのであり、冷暖房設備の撤去工事も、”後に原告堀夕美かみずからしたように、他の区分所有者への供給とは切り離して、比較的容易にすることができたのであるから、管理会社である株式会社シャトー管理ないし旧黒川建設としては、昭和五五年四月五日より前、給湯停止前に、冷暖房の供給停止を条件に、それまでの管理費及び冷暖房費の滞納分の支払を求める交渉をしてしかるべきであった。その上、株式会社シャトー管理の事務処理上のミスから、原告堀夕美の入居後約一年を経て冷暖房費の請求かなされるようになったことが、原告堀夕美に管理会社に対する不信感を抱かせる原因となったことが容易に推認できるから、株式会社シャトー管理の原告堀夕美に対する対応は適切を欠いたもので、本件給湯停止の措置は、権利の濫用に当たるものといわざるを得ない。原告らのこの点の抗弁は理由があり、本件給湯停止の措置は、原告らに対する不法行為となるというべきである。
 
 
 
東京高裁昭和50年11月26日
前示管理委託契約に基づき管理権限を有する上告人会社の業務担当取締役たる福田が管理人大賀に指示して、訴外菊地に対し、被上告人との話合いがつくまで本件住居を他に賃貸するのは待ってほしい、もし貸してもガス、水道を開くわけにはいかない旨申し入れたことは、上告人会社からの再々の改善方申入れにもかかわらず、被上告人としてはこれに対し何らの回答もしなかったなど原判決が認定判示する前記諸事情のもとで考えれば、本件マンシヨンの管理運営上やむをえずなされたものいうことができるし、その表現自体、被上告人との話合いがつくまで本件住居の賃貸借契約の締結を待ってほしいというものであり、その趣旨は前記管理委託契約における被上告人の今後の義務履行を確実にするための話合いに応ずるよう仕向けることに主眼があり、もし貸してもガス、水道を開くわけにはいかないという後段は、前段の右趣旨を強調するためのものと解され、しかも、原判決の認定するところによれば、前記のごとく、福田の指示による管理人大賀の右申入れを菊地から通告された本田としては、右申入れによって本件住居の賃借を断念したというのでなくて、その後一か月を経過しても、被上告人と上告人会社との間に何らの解決もなされなかったので右賃借を断念したというのであるから、この事実関係にも照らして考えれば、福田が大賀に指示して行った右申入れは、原判決がいうように被上告人の本田に対する本件住居の賃貸を差し止めるまでの趣旨とは解されず、管理業務上の行為として行きすぎのものであるということはできず、これをもつて違法、不当と評価するには値しないものといわなければならない。
 
→裁判所の判断としては、他の方法をとることが著しく困難であるか、実際上は効果がない場合に限って水道や電気の供給停止が認められている。
 
・滞納者の氏名公表
滞納者の氏名を、掲示板等で公表し、支払いを促す方法も考えられる。この場合には、滞納者から名誉棄損、プライバシー侵害として訴えられる可能性が生じる。人の社会的評価を低下させることが名誉棄損であるため、管理費の滞納者の氏名や滞納金額を不特定多数の者が知ることが出来る状況に置くことは、名誉棄損にあたる可能性がある。特に、インターネット等、区分所有者以外の者も事実を知ることが出来るため、リスクが大きい。
 
東京地裁平成11年12月24日
本件立看板の文言及びその記載内容は、右2(二)によれば、単に原告乙山らが管理費を滞納している事実及びその滞納期間等を摘示したもので、右2(四)のとおり、原告乙山らには管理費の支払義務があるので、その内容は虚偽ではない。次に、浮山町会は、右2(ニ)によれば、総会における会員の発議により、総会の決議に基づき役員会の決議を経た上で会則の適用を決定し、その後、滞納金額等を公表すること及び管理費納入の意思があれば公表を控える旨を原告乙山らに通知し、本件立看板設置前に一応の手段を講じている。そして、右2(一)及び(二)によれば、原告乙山らの「浮山を明るくする会」が浮山町会を批判してそのメンバーが管理費を滞納していること及び本件立看板は三四か所にもわたって設置され、本件別荘地に住民以外の者も出入りできるため、住民以外の者も原告乙山らが管理費を滞納している事実を容易に知り得る状態にあったという事情はあるが、浮山会としては、管理費を支払っている会員との間の公平を図るべく、原告乙山らにつきサービスが停止されたことを関係者(来訪者など)に知らせ、ゴミステーションの利用等浮山町会が提供するサービスを利用させないようにするために、本件立看板を、特にその大半をゴミステーション付近に設置したものであり、公表という措置そのものがもつ制裁的効果はあるとしても、ことさら不当な目的をもって設置したものとまではいえない。また、本件立看板が一年以上設置されたのは、原告乙山らが依然として管理費を支払おうとしないためであり、浮山町会は、管理費を一部でも支払えば氏名を削除するという対応をとっていたものである。

このように、本件立看板の設置に至るまでの経緯、その文言、内容、設置状況、設置の動機、目的、設置する際に採られた手続等に照らすと、本件立看板の設置行為は、管理費未納会員に対する措置としてやや穏当さを欠くきらいがないではないが、本件別荘地の管理のために必要な管理費の支払を長期間怠る原告乙山らに対し、会則を適用してサービスの提供を中止する旨伝え、ひいては管理費の支払を促す正当な管理行為の範囲を著しく逸脱したものとはいえず、原告乙山らの名誉を害する不法行為にはならないものと解するのが相当である。
 
・専有部分の使用禁止請求
区分所有法58条では、共同利益に背反行為をしている区分所有者に対しては、他の区分所有者全員又は管理組合から、専有部分の使用禁止を請求できると規定されている。しかし、この請求には
①有害な行為・共同の利益に反する行為
②共同生活上の障害が著しいこと
③行為の停止等の請求では共同生活の維持が困難であること
④区分所有者及び議決権の3/4以上の特別決議
の要件を満たす必要があるため、管理費の滞納でこの手段を採ることは困難であると言える。
 
 
 
 
 
【マンションに関する他の問題】
近年問題になっているのはリゾート型マンション、投資目的のマンションにおける問題。住宅として使用していないことから、管理費の滞納が問題になることが多い。同様に、住民がいないため、管理組合による集会が開催できないこともある。
 
【稀有な事例】
マンションの最上階を区分所有している区分所有者が、屋上庭園を作りだした事例。
最上階であったため、既存のベランダの周辺に余裕があるつくりになっていた。それを利用して工事をし、ベランダの面積を増やして庭園のようにして利用をしていた。管理組合側が停止を請求して裁判所に訴訟提起。

どんな些細なご相談でもお気軽にお問い合わせください 045-650-2281

 

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